神戸の自然シリーズ6 神戸の野鳥観察記
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■3.ホトトギスとウグイス −寄生的繁殖者と犠牲者

2.ホトトギスの鳴き声

 鳴き声は、声量があり、火がついたように甲高い声で鳴き立て、何かを訴えているような迫力がある。

 夜間も鳴く習性が、さらにこの鳥を有名にした。夜はまわりが静かだし、ほかに鳴く鳥も少なくて注意をひき、昔の人の夜に対する特別な気持ちと相まって、この鳥を強く印象づけたのであろう。実際には真夜中にはそんなに鳴くものでなく、宵のうちと、早暁の3時頃から日の出頃にかけてがよく鳴く時間である。とにかく、その特有の声は、文学の世界でもよく取り上げられているが、やはり、それだけのことはある。

 鳥の声は文字に表わしても実感が出ないが、昔の人はホトトギスの声を「テッペンカケタカ」と聞きならし、最近では「特許許可局」という聞きならしもある。もっと素直に書けば 「キョッ、キョン、キョキョキョキョ」または 「キョッ、キョ、キョキョキョ」となる。遠くで聞くと甲高く金属的響きさえ感ずる声も、間近かで聞くと、ふくらみのある肉声で 「クワ、クェ、クワ、クワ」という感じになる。口を大きく開け、そのとき口内のオレンジ赤が目立ち、さらに喉の奥から全身の力をふりしぼって送り出されてくるこの音色に、昔の人は「鳴いて血を吐く」といったのである。テリトリーの決った6月の六甲では、尾根にある決った松の大木で長時間鳴いてから、ひらひらとした羽ばたきで次の木へと移って、またそこで鳴きつづけるというような動きがみられる。鳴きながら谷を飛び越していく姿をよく見るものである。もっとも活発に鳴くのは6月の霧の季節である。姿は見えず霧の中を声だけが移動して行くのは何ともいえない風情がある。深い山に来ているような気分をもり上げてくれる。時には 「ピ、ピ、ピ、ピ、ピ」と鳴くが、これは地鳴きである。雌はこの鳴き声だけである。雄2羽が接近した時には猛烈に鳴き交わし、ついには調子を乱した鳴き方になってしまう。また、鳴いている雄の近くに雌がくると、テンポが早くなり調子も乱れ、熱のこもった鳴き方に変調する。

 ホトトギスが属しているホトトギス科の鳥は迷鳥的なものを除くと、日本では4種が知られている。そのどれをとってみても数の多い鳥ではないが、鳴き声がいずれも明瞭でおぼえやすく、この類をなじみ深いものにした。つぎにこの4種を簡単に紹介しよう。

 この中で誰でも知っているのが、カッコウである。ホトトギスよりずっと大きく、鳩ほどの大きさに見えるが、色も型もホトトギスにそっくりである。神戸では渡りの時期に少数のカッコウが通過する。まれに六甲に棲みつく年もあるらしい。春の渡り(5月中旬頃) では鳴きながら南からやって来る。カッコウはホトトギスのように夜は鳴かない。

 神戸ではカッコウよりもツツドリのほうが多い。カッコウとは大きさも型も色もそっくりである。強いていえば、背の灰色がカッコウより少し濃く、胸の黒い横縞の幅が広い。カッコウが草原の鳥であるのに、こちらは深い森林を好む鳥である。「ポ、ポ」と低い声で竹筒を吹くような声で鳴く。声を聞けば間違うようなものは他にはいないが、姿だけではカッコウと区別しにくい。4月中旬から5月にかけて神戸の山ではわりに多い鳥であり、六甲山には夏を通じて少数のツツドリが残っている。秋の渡りでは数はさらに多く、9月〜10月の低い山の森でたびたび見られる。

 もう一種、ジユウイチは、カッコウと少し違った色で胸の横縞がない。「ジュウイチィー」と高い声で連呼し、最後は 「ギチギチ…」とつまる。昔の人はこの声を 「慈悲心」と聞いたので、この鳥の別名を 「慈悲心鳥」という。神戸では渡りに通るだけで、その数は少ない。

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