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4-1.竹ぐしとハケでの発堀作業
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「わっ、また壊してしまった。」
「パラロイドをとってくれ。固めないとだめだ。」
「これは骨なの?材なの?見みて下さい。」
「ここは何も出てこないや。」
「大物が出てきたぞ。」
そんな声があっちこっちから聞こえてくる。にぎやかな発堀景である。
11月22日、18人が参加して本格的な発掘が始められた。竹ぐし、柄つき針、手ぐわを武器に地層を表面から少しずつ下に掘り下げる。50cm×1mの四辺形が一人の分担範囲である。
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骨が埋まっていると考えられる4m×2mの範囲を16の区画にわけて掘る。
手ぐわで地層を掘る。骨が出てきそうな所まできたら武器は千枚どおしに変わる。斜めにつきさした千枚どおしで地層を一枚一枚おこすように取り除いていく。骨が出てきたら、薬品(バラロイドのアセトン溶液)を注入して固める。次は竹ぐし作戦である。骨の表面をさぐるようにして竹ぐしでシルトを少しずつ除いていく。小さな骨片は、すぐにとりあげられるが大物になるとかなりの時間がかかる。
骨の表面の形がわかり大きさが確認できたら、その位置を測量し記録する。写真を撮ってから取り上げる。とりあげた骨には順番に番号を付ける。11月23日までに付けられた番号はすでに60を超えた。
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長さ30cm以上の大物になると作業はむつかしくなる。その骨を含む地層をブロック状に浮き上がらせ台に乗った状態にする。骨の表面を紙でおおい石膏でおおう。骨は石膏で保護されることになる。しばらくして固まったらブロックの下面に堀り込みを入れ取り上げる。それをひっくりかえして裏側にも石膏をぬりつけ全面がおおわれるようにする。こうしないと骨は運搬の途中で折れたり砕けたりしてしまうからである。こうした作業は専門家の京都大学の三枝さん、久家さん、神谷さんらがする。
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一日中手ぐわで掘り進んでも一つの骨片にも出あわなかったのは竹崎さん。「僕は、大事な骨をこわしてしまうのがこわい」と言って少しでも骨が顔を出すと、そこを他の人にゆずってまわりを黙々と掘るのは矢野さんである。
「ぜひ、こんな発掘を一度経験してみたかった。」と岡山からはるばるかけつけた稲田さん(岡山大学)は丸1日かかって長さ40cmもの前足の骨の形を出した。その手つきは、さすが考古学の発掘でならしたたくみなものである。
島田さんが「あっ変なものが出てきた」とさけんだ。「それが骨ですよ。注意して下さい。これは肋骨だから、この方向にのびていくはずです。」と三枝さんは線を引いた。その時、1m近く離れた所を掘っていた竹中さんも悲鳴をあげた。骨をけずってしまったからだ。その二つの骨が長さ1m近くものりっぱな肋骨の両端であることが確認されたのはそれから2時間後のことである。三枝さんが一端の出た時に描いた予想線はドンピシャリとあたっていたのである。
大前さん、本城さんは黙々と真剣な表情で掘っている。碓井さんは鼻歌を歌いながら「感激だなぁ、明日の授業は、この話をしてやろう」と言っている。10月以来始めの頃から発掘作業に参加して、ベテランの域に達した小林さんは、つるはしで周辺の掘り下げにまわっている。杉原さんは、道具類や弁当の買い出しをかって出てくれる。
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(次のページに続く)
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