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3.本格的発掘計画
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化石の含有層までパワーショベルで地層を取り除くことにした
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ショベルの幅が1.5mもある大型のショベルカーが動き出した。
まず地層の最上部をしめる礫層だけをけずりとる。一箇所に集められた土砂をおしのけて別の場所に運ぶのはブルドーザーの役割である。
次は、その下位の茶褐色に風化した1m程の粘土層をとりのぞく。ショベルカーとブルドーザーのコンビネーションはみごとと言う他はない。この深さまではまず絶対に大丈夫である。骨が出てくることはない。それでもショベルが地層を1回けずるたびに何か出てこないかと目をこらす。
いよいよ骨が含まれているシルト層をけずる。どこまで、この大型の重機によってはぎとるかは大問題である。
私達は、それまで地層を斜めに切りとった法面の中ほどにはりついて骨を掘り出していた。その日までに幅1m、奥へ40cmほど掘りこんだ。その結果30個ほどの骨を取り出したのだが、奥へ行くほど骨は多くなる。しかも奥へ行く程とりのぞくべき土砂の量は多くなってくる。もはや”たぬき掘り″とも言えるこの掘り方では不可能なところまできていた。
一体分の骨がまだ奥に埋っているのなら、上の地層をとりのぞき、掘り下げ、水平面を出して上から掘っていく必要がある。そのためにはどの程度の広さにわたって上の地層をとりのぞくか、すなわち骨がどこまで広がっている可能性があるかを判断する必要がある。
石田先生は今までの発掴の経験から10m四方は要注意、20m四方のはぎとりを主張。骨の広がりは、せいぜい3m四方だと考えていた私達にとってはとんでもない広さだった。しかし、発掘が進むにつれて石田先生の判断はみごとに適中する的確なものだったことがわかってきた。ここまで広げていなかったら2本の象牙の完全発掘も、シカの下あごの骨の発見もなかったかもしれない。
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このシルト層をどこまで掘り下げるかが大問題である
地層のへこみは今までに手で掘ったところ

石田先生の手紙の一部
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さて、地層をどのレベルまで掘り下げるかの判断はどのようにしておこなったのだろう。結果的には残しすぎもせず、堀りすぎもしないピツタリの判断であった。あと20cm浅ければ発掘の労力は数倍かかっただろうし、20cm深ければ骨のいくつかは粉々にくだかれていただろう。20cmというのはショベルのつめの長さで、これ以下の精度では、このショベルカーでは調整がきかない限度である。
シルト層は厚いところで3.2m、それが東西へ薄くなっている。北方向へも薄くなっている。このシルト層の広がりを確かめるためにトレンチといわれる溝をまず掘ってもらった。骨はシルト層の下面から20cmまでのところに密集している。手掘りで掘れる限度を30cmまでとみて、そのギリギリの所を決定しスプレーで線を引いた。約2.5mの地層を2次にわけて掘る。1次は、まず骨は出てないと思えるが、ショベルが1回地層をけずるたびに数人で、そこをよく観察する。
この日から、その後の発掘にとってはなくてはならない助っ人2人が参加していた。京都大学の三枝春生(さえぐさはるお)さんと久家(くが)直之さんである。
何回目かのショベルの掘削の時、オペレーターが急にエンジンを止めて指をさした。何かにあたったのだ。黒ぼい褐色の大物である。まわりで様子を見ていた私達はいっせいに、そこに集まった。骨をくだいてしまったのだろうか。その大物を手にとって私達はホッとした。それは直径20cm、長さ1mもある木材であった。大きさ10cmもある二枚貝、直径5cmものタニシなど貝化石もたくさん出てくる。
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いよいよ本格的発掘の準備は整った
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ショベルカーは巨大なずうたいにもかかわらずたくみな手つきで地層をはいでいく。1次の掘削が終り、いよいよ骨の出る層のギリギリまで掘り下げる。1回1回慎重にショベルをおろしては確認をする。そして地層をはぎとる。幸いにも木材や貝殻、木の実は多数出てくるが骨は出てこない。予定のレベルまでの表面を出した頃は、すでに5時が近づいていた。全体の整地作業と地層観察のためのトレンチをつくる作業は翌日に残し、この日の本格的発掘の準備作業は終ることにした。
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