神戸の自然シリーズ19 アカシ象発掘記 神戸の自然研究グループ
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-2.竹ぐしとハケでの発堀作業
(前ページからの続き)


 11月23日までに肋骨6本、上腕骨(じょうわんこつ)、大腿骨(だいたいこつ)などの四肢の骨、踵骨中足骨指骨など手足の骨などが出土していた。中でもみごとだったのは環椎(かんつい)である。環椎は頭につながる首の骨である。そうすると当然頭骨や象牙臼歯などが出てくるはずだ。そんな確信が出てきた。

 12月2日には樽野さんが思わぬものを堀り出した。ニホンムカシジカの角の化石である。アカシ象の多数の骨にまじってたった一つシカの角が出てくるのはどうしてだろう。

 私達が[2−2]と名づけたグリッドでは困ったことが生じている。一つの骨を取り上げるためにそのまわりを掘る。するとまた大物が出てくる。そのまた周りを掘る。そんなふうにしてどんどん範囲が広がってどの骨も取りあげられなくなっている。

 どこまでの範囲に骨は散ばっているのか、それを早急に確める必要があった。しかし、竹ぐしでの発掘作業は一日いっぱいどんなにがんばった所で、たいした広がりを見せるものではない。

 骨のうずもれている範囲をみきわめるために逆に骨がない所を確認して、それをだんだんとちぢめていくことになった。シルト層をつらぬいて青粘土まで掘って、出なければもう骨はない。この作業は骨が出てこないと思える所だだから、つるはしを使う。だいいち少なくとも50cmは掘らねばならないから手ぐわでは間にあわない。

 「しまった。やってしまった。」

 「こりやいかん、もっと範囲をひろげにゃ」

 12月10日、この発掘のボスである前田さんが大事なことを見つけた。も、つここには骨はないだろうと3メートルも離れた所を掘っていた。ところが、50cmの探さから骨が三つも出てきた。

 つるはしは骨をくだいてしまった。さいわい、それ程大きくない骨片であったが骨が出る範囲は北へ北へとどんどん広がっていく。この発見で発掘が、そう簡単には終了しそうにもないことがはっきりしてきた。同時に象牙や頭骨の出てくる可能性も高くなってきたということでもあった。

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