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8.発掘に活躍した道具類
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穴あけ機は青粘土に刃が立たない
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パワーショベルとブルドーザーのコンビは、
地層のはぎとりに力を発揮 |
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ところで今回私達がアカシ象を発堀するために使ったいろいろな道具や薬品について書いておこう。
道具と言っても、大は大型のパワーショベルから小は竹ぐし、小筆でまで様々である。
パワーショベルは、2回投入したが1回目は1.2といわれる大型である。ショベルの幅が1.5メートルもあり1回ごとの掘削量が1.2m3というものである。大型のブルドーザーとコンビですごい力を発揮したことはすでに書いた。
2回目のショベルカーは0.4というものである。これは最後に象牙と骨の密集層をまるごと掘り上げるために周辺を1mほどほり下げ、それを運ぶための道(斜面)をつくるのに使ったほか、1トン以上もの骨と地層ブロックをつめこんだ木箱をつりあげ斜面をおろしてトラックにつみこむために力を発揮したものである。
エンジン付杭穴開け機は、くいをうちこむために使用した。化石のブロックを全体としてとりあげるための横穴をあけるために使おうと計画したが、ここの地層のように固くしまった粘土には全く役に立たなかった。
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発掘に使われたいろいろな道具
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道具は用途に応じて使い分けられる
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ツルハシ、これは大小2種を使用した。地層を骨の出る層まで堀り下げる時に使ったが骨の出る層の近くでの使用は厳禁である。骨にあたれば粉々にくだいてしまうからである。しかし手ぐわなどの作業では能率があがらないのでどうしても使用せざるをえない。その場合にはなるべく力を入れて大きく打ちこんで大きなブロックとして地層を堀りおこすのがよい。
シャベル。地層を掘りおこすのには不適だが、これを使って地層の断面をきれいにけずりとる。東海アナースの作業員の人達が出してくれた地層観察用のトレンチは、みごとであった。
テミ。けずり取った土砂を他の場所へすてるのに使う。この作業はできるだけひんばんに行なって作業現場は常に土砂をとりのぞいた状態にしておくことが出てきた骨をこわしてしまわないために重要なことであった。
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三宅さんの作ってくれたいねぼうきと竹べら
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骨が出てくる地層を掘るのに最も多く使われたのは手ぐわと千枚どおし、ドライバーである。理想的には千枚どおしやドライバーで地層を少しずつ表面からはつっていき、骨が出てくると竹ぐしや竹べらを使うのがいいのだが、能率の点から手ぐわや根かりガマも使用せざるをえない。地層をけずるということは、そこに含まれる骨もけずるということである。最初の一げきによる骨の破壊、それは骨をさぐりあてるために止むをえないことである。その第一げきで骨が出てきたら次に骨をこわすことは許されない。
骨の表面を出すために竹ぐしが使用されることになる。柄つき針も有効だが、骨にあたった時傷つける可能性が大きく、おれやすいのが欠点である。およその形や大きさが判明したら千枚どおしやドライバーでまわりを掘り込んでうきあがらせるのである。
竹べらと、いねぼうきは、11月の発掘に参加した森林植物園の三宅慎也さんが手づくりのものをたくさん作ってくれた。骨をなるべくこわさずに表面をさぐり出すのに竹べらが力を発揮。
骨の表面は、まわりを掘るとすぐ見えなくなってしまう。土砂がかぶさってしまうからだ。それは、こまめにいねぼうきを使ってとりのぞいていく必要がある。息をふきかけて、とりのぞくこともしばしばあったが、はいつくばって顔を近づけて作業をしているため、その土砂は、顔を直げきする。そこで、ストローを口にくわえ、それで息をふきかけるというのは樽野さんのアイデアである。
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こわれた部分は接着剤で修理
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骨の出てきた所はペイントでマークしておく
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石膏で表面を保護する
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骨はたいていの場合もろくこわれやすいものである。表面は、ややかたく、内部はもろい傾向がある。骨を固化させるために当初はバインダーという薬品を使っていた。しかし、これは固化するまでに時間がかかり、かえって注入直後は骨をやわらかくするという難点をもっている。野外での作業では不適切であることがわかり、パラロイドを使うことにした。パラロイドをアセトンで溶かしたものを骨の中に注入すると数分でかたまる。しかし、これは十分内部まで浸透しないため、バインダーで全体を固める作業は室内でのクリーニング作業の時には必らずしなければならない。
パラロイドもバインダーも骨を固化はさせるがこわれた骨を接着することはできない。運わるくこわれてしまった骨は、ただちに修理しておく必要がある。このために使ったのは瞬間接着剤アロンアルファーである。2mlで230円と高価なこの接着剤が、今回の発掘で1万円分ぐらいは使われた。
骨を取りあげる時に、まわりを固めるための石こう。大型のものを木箱に完全にうめこんでしまう時に使った発泡ウレタン。
骨の出てきた所をマークするためのペイント・マーカー、その他にも測量や地層観察用のクリノメーター、ハンドレベル、箱じゃく、糸、まき尺、くぎ、ハケ、ふで、スポイド、セメダイン。
そんな数十種の道具が、この発掘に使われたのである。
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クギ、糸で発掘するグリッドを区画する
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毎日終了後には現場をシートでおおっておく
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