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2.今度の発堀で何がわかるのか
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環椎(かんつい) (頭につながる首の骨)
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| 軸椎(じくつい) (環椎の次の首の骨) |
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11月末から本格的な発掘に入り、1月8日に完全に掘りあげた象化石は、現在は教育研究所で慎重にクリーニングされている。このクリーニング作業と形態の測定などの研究は、これから、ほぼ1年の研究期間を見込んでいるが、この間にどんな内容が新しい事実として見つけ出されそうなのか。化石長鼻類の研究をしている京都大学の三枝春生さんに聞いてみた。
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| 1. |
切歯(牙) 左右各1本 |
14. |
右1本 |
| 2. |
臼歯 左右上下各1個 |
15. |
上腕骨 左1本 |
| 3. |
下顎骨(部分) 左右 |
16. |
大腿骨 左1本 |
| 4. |
茎状舌骨 左右各1個 |
17. |
中足骨(第2) 右 |
| 5. |
頭蓋骨(破片) |
18. |
中足骨(第4) 右 |
| 6. |
頸椎(環椎) |
19. |
有釣骨 右 |
| 7. |
頸椎(軸椎) |
20. |
三角骨 右 |
| 8. |
頸椎 3個 |
21. |
豆状骨 右 |
| 9. |
胸椎(棘突起) 3〜4個 |
22. |
月状骨 |
| 10. |
胸椎(椎体) 3個 |
23. |
舟状骨 右 |
| 11. |
尾椎 1個 |
24. |
立方骨 左 |
| 12. |
第一肋骨 1本 |
25. |
踵骨 左 |
| 13. |
肋骨 20本〜25本 |
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骨の名称
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(1) アカシ象の復元が正確になる。
体の各部分の骨が出てきたので、骨と骨とのつながり方や大きさの比率などが解明される。たとえば首の骨でいえば、頭につながる環椎が完全な形で出ており、これに続く軸椎も完全で、6個の頸椎のうち四個がそろい、あとの二個も破片で出土している。首の骨に関しては全部産出したことになる。さらに手(足)首もかなり揃い、アカシゾウのプロポーション(体型)がどんなものだったかが推定できる。
(2) 紀川標本より大型の意味
今回のアカシ象のように全身骨格の規模でアカシ象が産出したのは、昭和41年の紀川標本だけである。その紀川標本の大きさは、体高(肩までの高さ)1.5m、牙の長さは1.3mである。この標本は体高2〜2.2m、牙は1.7mの長さで、ともに紀川標本をはるかに上回る大きさである。
ところが、両標本の年令はともに老令期のものである。歯のすり減った磨粍の程度と何回日の歯であるかによって象の年令を推定するのであるが、どちらも最終の交換の6回目の臼歯で、しかも磨滅がすすみ、まさに天寿を全うしたといってもよい年令である。象は60才ぐらいが自然状態での寿命である。ほぼ同じ年令でありながら、こんなにも大きさが違う。個体変異の幅の中に入る大きさなのだろうか。
この点に関して三枝さんは次のような推論が成り立つのではと話している。
「アカシ象の個体数が少ないので断定はできないが、この標本は雄で、紀川標本は雌ではなかろうか。インド象でも雄は雌に比べて大型で、雄大な牙をもっている。」
これは極めて興味深い推論であをが、産出地層の年代もほぼ同期であることからみても、論拠のない推定ではない。
(3) 歯の咬み合わせのようすがわかる。
これまでのアカシ象で、上下の歯が4本そろって産出したケースは全くない。この標本では幸運にも4本全部そろった。完全復元まだ先のことだが、どんな種類の植物を、どんな咬み方で食べていたのかがわかりそうで、興味ある解答が得られそうだ。
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オオバラモミ球果
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スモモの実
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(4) アカシ象の生息時代の自然環境がわかる。
アカシ象はなぜこの場所で化石になったかについては、すでに前の章で述べた。それではアカシ象が神戸にすんでいた時の自然はどんな状態であったのか。
当時の自然環境をさぐる手がかりは、象を含んでいた地層の中にある。写真のような植物の実や葉の化石、材の化石も採集された。木の実では、現在は中国の四川省や湖北省にのみ生存しているメタセコイアの球果があり、同じ針葉樹ではオオバラモミの球果も採集できた。そのほか、スモモの類、マンサクの類、エゴノキなどがある。これらを手がかりにして植生のようすや気候についてもある程度推定できるようになる。
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また、アカシ象を含んでいたシルト層の直下の青粘土層の中に灰色の火山灰の薄い層がある。この火山灰には斜方輝石、普通角セン石が多く入っており、純度の高いきれいなジルコンも多数含まれているが、火山ガラスは風化されてしまったのかあまり積っていない。現在ジルコンを試料にフィッショントラック年代を測定中である。※注 この粘土層の下位にある小寺粘土層中のヤギ火山灰層と、この粘土層中の上位にある春日台火山灰についてはすでにフィッショントラック年代はそれぞれヤギ火山灰は190万年前、春日台火山灰は160万年前と測定されている。近い内にこの火山灰のフィッショントラック年代を通して、この象の生息年代が明らかにされる。
さらにこの火山灰を含めて上下の地層の古地磁気の測定を神戸大学の地球科学科に依頼しているので、当時の磁極や伏角などがわかる予定である。さきのフィッショントラック年代と古地磁気の結果とをクロスチェックしてアカシゾウの生息した地質時代をより確かなものにできるだろう。
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