神戸の自然シリーズ1 六甲の断層をさぐる 
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大月断層 (おおつきだんそう)

大月(土橋)断層
給水タンク予定地で発見された断層を調査中の人々(昭43撮).


 五助橋断層によりそうように、その北側を平行して走る大月断層が、幅は狭いが花こう岩を徹底的に圧砕し、高角度をもつ断層面を見せたのは昭和43年(1968年)、鶴甲団地造成地であった。

 六甲ケーブル土橋(どばし)駅の南、100メートルたらずの所の団地の給水塔建設予定地の真中に、どんと居直ったかのように正面きってその素顔を見せた。山側の衝き上げてきた花こう岩は、ハンマーでたたくと、パッと白い粉が飛び散るほど、完全に圧砕されていた。しかし、断層破砕帯には付き物の滞留水は、ここでは全く見られなかった。

 断層の下盤にあたる海側の礫層はガサガサの締りの悪い角ばった花こう岩で構成され、土石流起源のものであった。その厚さはボーリング調査で確かめた結果、8メートルで、その下は基盤の花こう岩であった。

 断層面は北から西へ80度、南ヘ78度の高角度の傾斜を示した。この断層は大月断層本体より派生したもので土橋断層である。その延長は、西の勝岡山北方にのびる。

 ところで、この断層面の発見は、一つの決断を給水タンク設置者である神戸市水道局にせまった。その発見された位置が、まるでタンクの中心をねらったかのような場所であったからである。

 六甲山地の地質を長年にわたって研究している大阪市立大学の藤田、笠間両教授をまじえて検討した結果、タンクを南西へずらすことを決定した。

 現状では断層破砕帯には滞留水はなく安定しているが、もし将来、大地震の影響をうけ、この断層面を挟む両側の地盤が不均等な上昇、沈下、水平ずれなどを起こす場合を考慮して、どちらか一方の側に移すことになり、南側の地盤に移ったのである。

 この大月断層は、地形にもよくその特徴である破砕帯の凹地形が追跡される。大月谷上流では、右ずれ断層の動きによる川すじの変移が確かめられている。また、山陽新幹線のトンネル工事のとき、大月断層の破砕帯のある部分では後述するように異常出水をおこしたところもあった。しかし、ここの地中で断層とトンネルとが交差するところでは、全く出水はみられなかった。

工事場にあらわれた大月断層(昭43撮).


板のようなすべり面をみせた大月断層の断層面
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