兵庫県南部地震データ集 神戸の自然シリーズ 神戸の大地のなりたちと自然の歴史 予想された兵庫県南部地震

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■7.予想された兵庫県南部地震
■ 地震前の神戸市民の「地震意識」

 兵庫県南部地震は神戸市民にとって、「寝耳に水」の大地震でした。
 神戸市民で「大地震が起こる可能性がある」と思っていた人はほとんどいませんでした。「近畿地方では大地震は起こらない」と信じていたという人、「地震のことなど考えたこともなかった」という人が多くいました。

 一部には「地震が起こるかもしれないと思っていた」人もいましたが、活断層の存在などと結びつけてそう思っていたわけのではなく、ばくぜんとそう思っていました。「確かに学校で先生に神戸では大きな地震は起こらないと教えてもらった」という人までいます。ばくぜんとした思いが、思いこみにつながり、伝聞によって拡大され、やがて定着し、人々の意識の中に根付いていったようすが想像されます。

 近畿地方とその周辺では1961年の北美濃地震(M.7.0,死者8人)以来30年以上もの間、大きな地震は起こっていませんでした。繰り返す地震の活動期と静穏期のなかで、つかの間の静穏期のあいだに、人々の意識から地震が消え、「近畿で大地震が起こらない」との思いこみが広がってしまいました。

■ 神戸で大地震が起こることは予想されていた

 神戸市は1972年に「神戸市における地震対策」調査を大阪市立大学の笠間太郎を代表とした研究者に委託し、2年後の1974年、その調査報告は「神戸と地震」という冊子にまとめられました。

調査報告には
  • 「神戸市周辺地域は、活断層とよばれる新しい断層系が複雑に走っており、これらと地震との関連が、他都市の地震対策と異なる注目点となる」
  • 活断層は有史時代の記録こそ少ないが、長い地質時代において地震が繰り返して発生した場所の証拠」
  • 「いつか大地震がおこるとして、地震対策を考えなければならない」
  • 「将来、都市直下型の大地震が発生する可能性はあり、その時には断層付近で亀裂・変位ががおこり、壊滅的な被害を受けることは間違いない」
と書かれていました。

 明快率直に、わかりやすく大地震の可能性を指摘されていました。

 この報告書を受けて、神戸新聞は、1974年6月に「神戸にも直下地震の恐れ」と夕刊のトップに9段記事を書いています。しかし、市民の間では、それは大きな話題にはなりませんでした。その後も、兵庫県震災対策調査報告書、地域地質研究報告・神戸地域の地質などでも同じような指摘がされています。



 「神戸地域の地質」は通産省の研究機関である地質調査所が発行するものです。その中に「神戸市周辺において今後大地震が発生する可能性は十分にある」、「壊滅的な被害を受ける確率は大きい」と断言していました。

 このような警告にもかかわらず「大地震が起こらない」という思いこみを拡大していった市民の意識とのギャップはなぜ生じたのでしょう。神戸で大地震が起こる可能性について、研究者が警告を出していたのにそれが市民や行政に伝わりませんでした。


<引用文献>
  1. 「神戸と地震」(笠間太郎・岸本兆方、神戸市総務局・土木局,(1974))
  2. 「兵庫県震災対策調査報告書」(三東哲夫:兵庫県,(1979))
  3. 「地域地質研究報告・神戸地域の地質」(藤田和夫・笠間太郎、地質調査所,(1983))

■ 変動する日本列島に生きる知恵

 日本列島は過去100万年間に100万回以上の大地震を起こして日本列島らしくなってきました。地震が日本列島をつくり山や盆地をつくりました。崖崩れが起こって洪水があったから人々が生活する平野ができました。

 日本列島は世界でも最も激しい変動帯に位置しています。世界には活動的な火山が400個ほどありますが、日本列島と周辺にはその5分の1があります。世界の地震エネルギーの10%は日本列島周辺で放出されています。私たちは「日本火山列島」、「日本地震列島」に住んでいます。

 西日本は兵庫県南部地震を始まりとする地震の活動期に入ったと指摘した研究者(尾池,1995)がいますが、その予想どおり昨年の鳥取地震、今年の広島芸予地震と大きな地震が続いています。東日本も含めて日本列島は「大地震時代に突入した」といわれています。

 一方で日本は世界の中でも降水量の多い地域でもあります。風化した花こう岩やもろい火山岩、崩れやすい火山噴出物によってできた大地に、流れの速い川が流れています。私たちは「日本砂山列島」、「日本洪水列島」に住んでいます。

 地震や火山、大雨や土砂の流出など自然の動きを止めることはできません。自然に人間が勝つことはできません。でも、自然現象である地震が社会現象である震災に結びつくとは限りません。洪水と水害とは別物です。

 大地のことを科学的に知り、地震・火山や洪水と共存する人間の知恵をどれだけ発揮するか、最大の防災対策である豊かな人間のネットワークをつくっていくかが問われています。


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