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ハチの化石
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▲発見場所
垂水区名谷町
の柱状図 |

▲標本のように見えるハチの化石
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▲ハネのもようもよく見える
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▲胸の部分の拡大
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夢にまで見た昆虫の化石
私は神戸層群からこれまで昆虫の化石が発見されていると知っていましたが、実際に自分の手で発見できたときの喜びを書いてみたいと思います。
1986年4月7日、この日は忘れることのできない記念すべき日になりました。名谷をすぎ研究学園都市の近くへ、友人と二人で化石採集に行きました。この日はポカポカと暖かく初夏の陽気が感じられる日でした。あまりの陽気のよさに、もう化石を取るのをやめにしようかなと思っていたときです。小さなブロックをていねいに一つ一つ割ってみました。すると一つの石の中からハチらしい化石が出てきたのです。この時の感動といったら、文章ではとうてい表わせません。写真のようにちょうど今のハチを標本にしたような形で完全に残っており、一目見ただけでわかりました。早速、友人を呼び、1個体出たので近くからもっとたくさん出てくる可能性もあると言い、そのあたりの石を猛烈な勢いで割ったのですが、残念ながらこの化石1個体しか発見できませんでした。
神戸層群から産出している昆虫の化石は6個体あり、そのうち5個体は東京の国立科学博物館にあるそうです。それらの化石は、チョウやガの右前後翅の化石、さなぎ化石2個体、鱗翅類の幼虫と甲虫の右鞘翅の化石5個体となっています。この事は、発見者である大賀祐吉氏が地学研究(1966)に神戸白川層の昆虫化石と題した論文に報告しています。
残りの1個体はモリモトスズというコオロギの化石で、これは、故直良信夫博士が命名しており Nemobius morimotoi Naora と報告されていましたが、早稲田大学で保管中に戦災にあい標本は焼失したとの事です。
私のハチはこれまでの文献では7個体目になるわけですが、8000個という植物化石を採集した中で、昆虫の化石はたった1個体で非常に低い確率です。また、昆虫の化石は本体が小さいことが多く、細心の注意をはらって用心深く探す目をもたなければいけません。
さて、今回の私の発見ですが、神戸大学の桃井節也先生に見てもらったところ、ハバチ上科で
Nematinae 亜科だそうです。旧北区に広く分布するグループで北の方で種類が多いとのことでした。属や種がはっきりすると、昆虫と植物の関係とか、その当時の生態系の一部が解明できる興味のある資料だと思っています。
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