神戸の自然シリーズ4 六甲の森と大阪湾の誕生
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神戸の自然史のまとめ



約1万年前には海面は31mも低く,六甲山には,ブナやミズナラ・コナラ林がしげり,山頂近くにはトウヒやコメツガが生えていた.また海岸低地にはモミ,イヌブナなどが進出しはじめていた. 
1.ブナやミズナラ林,2.トウヒやコメツガ林


約5千年前には海面は2〜3m高く,現在の六甲山の森林の原型はほぼできていた.
1.シイやカシ林 2.モミやイヌブナ・コナラ林 3.ブナやミズナラ要素の林


 これまで述べてきたことをまとめると次のようになる。

 約15,000年前、海は紀伊水道のあたりまで後退しており、大阪湾一帯は広大な盆地状の湿原であった。周辺の山地にはトウヒ、コメツガなどの針葉樹が多かった。

 約10,000年前、気候の温暖化の影響をうけて、海はポートアイランドの東南端や淀川口まで進入してきた。その頃の海面は、現在の海面下30メートルであった。海岸低地や山麓にはコナラ、ミズナラ、イヌブナ、ブナなどの落葉林が繁茂していた。

 約8,000年前、現海面下20メートル前後にあった海面は、急速に上昇しはじめる。海岸低地の落葉林は北方や山地への移動が目立ってくる。

 約7,000年前、海は、海面下5メートル前後まで回復し、和田岬方面から現在の市街地に入りこんでくる。陸上では落葉樹林と照葉樹林との交代が急ピッチで進む。

 約6,000年前、海は3メートルの高さに達し、神戸市街の各地に波食崖をつくるほど、深く内陸へ進入してきた。縄文海進のピークである。海岸低地からほじまった森林の交代はほば終り、六甲山の中腹まで照葉樹林におおわれる。

 約5,000年前、この1,000年間は、これまでの大規模な変化に比べると安定した時期であり、現在の自然環境の原型はすっかり完成する。

 5,000年前以降の海は小規模な前進・後退を数回くり返し、現在の海面の高さに落ちつく。森林構成も基本的にはかわらないが、約2,000前からの人類の生産活動の拡大にともなってマツ・コナラなどの二次林が増加する。

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