5.有孔虫と貝形虫は語る
|

|
産出した貝形虫(池谷仙之さん提供)
|
高塚山粘土層をためた「高塚山の海」がどんな海であって、どのような変遷をしたのかを詳しく知るため、私たちは粘土層を詳しく調べるとともに、地層を細かく区分して試料をサンプリングして専門の研究者に調べてもらうことにしました。
有孔虫については静岡大学の北里洋さんに研究をしていただきました。北里さんから送られてきた結果は次のようなものでした。
|
高塚山貝層を下から五つにわけてとりだしたサンプルのすべてから内湾の汽水域から湾の中央にすむ保存のよい底生有孔虫がみつかった。
その種類は下の方から上にむかって大きく変化している。一番下の試料では湾の最も奥で塩分濃度が低い場所にすむ種類が圧倒的に多く、その上の試料では湾の中央の塩分の濃いところのものがふえてくる。
中ほどの試料では、汽水にすむ種類がほとんど消え、湾の中央の泥底や砂底の種類になる。一番上の試料では黒潮域の浅海にすむ種類がめだってくる。 |
|
すなわち、高塚山貝層がたまった環境は水深が0mに近い状態の湾の一番奥まったところから始まり、だんだんと水深が深くなり、場所としても湾の中央部にうつりかわったと考えられるわけです。
北里さんは、一番上の部分に黒潮系の有孔虫がめだつことに注目して高塚山の湾は、黒潮が紀伊水道から直接流れこんでくるような環境であり、そのためかなり暖かな海であったと推定しています。
同じ試料で貝形虫を調べてもらったのは、静岡大学の池谷仙之さんです。その結果はつぎのとおりです。
|
| 下部では沿岸の砂底にすむ種類が多く、内湾の泥底にすむ種類が混じっている。中部ではロの広い内湾の泥底にすむ種類が多く、それに沿岸の砂底の種類が混じっている。上部では内湾にすむ種類が多い。全体として黒潮の影響をうける浅い海の貝形虫ばかりで、寒流の影響下のものはみつからない。 |
|
有孔虫と貝形虫の研究の結果は、細かな点では多少違うところもありますが、高塚山の海が黒潮の影響をうける暖かい内湾で、時代とともに環境がかなり変化していったという点では共通しています。
|

▲
|