神戸の自然シリーズ17 神戸の地層を読む2
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3.河口近くの浅い海

ウニの化石

ヒトデの化石

 舞子貝層の中から私たちは24種類の貝化石とウニの化石などを見つけることができました。貝化石の入っている地層は、粘土層の下にあたるあらい砂の層です。

 この貝層もいろいろな場所にすんでいた貝が、貝殻となって集められてきたと考えられます。その中にはイタボガキやウネナシイトケガイのように浅い海の底(潮下帯)にすむものもありますが、ほとんどのものは、潮間帯にすむものです。潮間帯というのは潮の満ち干きによって海面下になったり、海面の上に出たりするような場所ですから海岸近くです。また、ヤマトシジミは真水のかなり混ざつた汽水域の河口などにすむ種類ですから、川が近くにながれこんでいたと考えられます。

 このように非常に浅い海の海岸近くの環境であったと考えられる貝化石をふくむ砂層の上に、細かい粘土層の地層が少なくとも10数mもたまっているのはどういうわけでしょうか。

 もし、海面がそのままなら埋め立てられてしまったはずです。きっと貝層をためた海岸ふきんはその後の急激な海面の上昇によって、粘土層をためるような、より深い海になっていったに違いありません。

 この川西粘土層の下部のほうからは、井上繁広さんが2種類の大量のヒトデが密集して化石になっている層が6枚もあるのを発見して注目されています。なぜこんなにも大量のヒトデが一度に死んで地層の中にとじこめられたのか興味ぶかい問題です。

 ところで私たちは、この川西粘土層の花粉の分析もしてみることにしました。前に書いた高塚山粘土層の時とどのように森林は違うのかという問題があります。

 その結果、次のようなことがわかりました。

 花粉化石のうち多いものから順にあげると、マツ属、ツガ属、トウヒ属、モミ属、ブナ属などのほかにスギやコウヤマキも出て樹木全体の70〜85%を占めています。広葉樹ではブナ属が10〜25%の範囲で出てきました。そのほか、ハンノキ、クルミ属などが見つかりましたが、暖かい温帯(暖温帯)のアカガシ亜属やシイ属などの花粉化石がほとんど出てきませんでした。

 この当時の神戸の森林は、ツガ、トウヒ、マツなどの温帯性針葉樹の中にブナが混じって生えている組合せでした。高塚山粘土層のときの森林に比べ、やや涼しい気候下の森といえます。

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