神戸の自然シリーズ17 神戸の地層を読む2
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2.淡水成粘土と海成粘土

淡水成粘土層は緑がかった青色をしている。
植物片が含まれていると黒っぼくなる(上部)

(西区神出町座頭谷)


海成粘土層は黒っぽく、いちじるしい酸性
を示す
(垂水区狩口台、川西粘土層)


 前の章で高塚山粘土層や川西粘土層は海成粘土層であると書きました。アカシゾウをふくむ粘土層は海成粘土層ではありません。

 これは塩分をふくまない淡水(真水)の水域、すなわち湖の底にたまった粘土層で淡水成粘土層といいます。海成粘土層と淡水成粘土層はどうちがうのでしょうか。

 もちろん、その粘土層がどのような場所にたまった地層なのかは、そのなかにふくまれている化石を調べることによってはじめてわかるものです。しかし、いままでの多くの研究者のいろいろな場所での研究の結果、くわしい分析をしなくてもその粘土層が「海成」か「淡水成」かはおよそ区別できることがわかっています。

 まず、同じような粘土層でもその色がずいぶん違います。海成粘土層は黒っぼい灰色から暗い灰青色をしています。一方、淡水成粘土層は緑っぼい青色をしています。この色は地層が地表にでてからあまり時間がたっていない場合の新鮮な地層で見られる色で、長い間空気にさらされると、どちらも表面が白っぽくなってきます。

 また、淡水成粘土でもその中に植物化石の破片をたくさんふくんでいるときには、海成粘土とよく似た黒っぽい色になっていることがよくあります。

 海成粘土だと判定できるもう一つの基準は、表面に黄色っぽいイオウの粉や白い結晶(硫酸塩)がふきだしていることです。しかし、海成層でもそれが見られないこともあります。海成粘土層の大きな特徴は、その地層のあるところはなかなか雑草が生えないということです。高塚山粘土層などは、地層が地表にでてから10年以上になるのに、雑草は生えていません。これは、海成粘土層にはイオウの化合物がふくまれているために、いちじるしい酸性をしめすからです。

 このことを利用して海成層かどうかの判定もできます。下のグラフは淡水成から海成に変化する高塚山粘土層と、そのほかの粘土層からとってきた粘土を水のなかに入れてほぐし、その中のpH(酸性かアルカリ性か)と電気伝導度(電気をどれくらい通すか)を測定したものです。

 粘土をとかした水はもとの水にくらべて、海成粘土では酸性になっているのに対して、淡水成粘土ではアルカリ性になっています。また電気伝導度は海成粘土では、淡水成粘土にくらべてかなり大きい値をしめしています。

 ただ、高塚山粘土層の貝化石をたくさんふくんでいる粘土は、貝の成分である炭酸カルシウムの影響でアルカリ性になったのだろうと思われます。また、海成層のすぐ下の淡水成粘土では、海成粘土と同じような値が出ているのは、上の海成粘土の影響(成分が下にしみこんだ?)と思われます。

図37 淡水成粘土と海成粘土のpHと電気伝導度の関係

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