神戸の自然シリーズ17 神戸の地層を読む2
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3.青粘土層のつながりを追う

西区櫨谷町友清の明石累層の地層


 アカシゾウはすべて淡水成の粘土層の中に入っていました。この中からはメタセコイアの実の化石もしばしば見つかり、この地層が明美累層より一時代古い地層であることは確かです。この地層を従来からこの地方の大阪層群につけられた名前である明石累層とよぶことにしました。

 私たちは、学園都市に広がる淡水成粘土層をかつて小寺粘土層とよびました。この粘土層と同じような粘土層は多聞町ふきんの大沢粘土層、明石市の海岸にある林崎粘土層、屏風浦(びょうぶがうら)粘土層、大久保の松蔭(まつかげ)粘土層などが以前から知られていました。これらの粘土層と小寺粘土層とはどのような関係になっているのでしょうか。

 もし、地層が完全に水平であるならば話は簡単です。それぞれの地層の出ているところの標高をはかって、同じ高さのところをさがせばかならず同じ地層がでてくることになるからです。

 地層が一定の傾きをもっている場合もちょつとした作図で地層のつながりを追うことができます。

 明石累層の地層は一見、水平に見えるのですがわずかに傾斜していて、それが場所によって微妙に変化しています。そのうえ、地層の厚さは一定ではなく、つぎに重なる地層によってけずりとられていることがあるため、地層のつながりを考えるのは思ったより難しいものでした。

 地層のつながりを判断するうえで火山灰の地層は重要なものです。火山灰は同じ時期にかなりの範囲にわたってどんなところにも降りつもります。そのため、火山灰は地層の中にある時間の目盛を残してくれることになります。

 私たちは、明石累層の中から10数か所で火山灰の地層を見つけました。それぞれを区別するために名前をつけます。

 フジタ火山灰、ヤギ火山灰、友清火山灰、春日台T火山灰、春日台II火山灰、井吹火山灰、座頭谷T火山灰、座頭谷II火山灰、座頭谷III火山灰、出合火山灰、西八木T火山灰、西八木II火山灰などです。

火山灰層(明石市西八木海岸)

火山灰層(西区春日台)


 しかし、ここにあげたほとんどの火山灰は白色〜白黄色の細粒のもので少なくと肉眼では区別のつきにくいものでした。しかも一枚の火山灰を追っていくと、ある場所では1m以上厚さがあるのにだんだんと薄くなって消えていく場合もあります。

 粘土層はみわたせる程度のはなれた場所では、地層の傾きや地形を考えて同じ地層の連続なのか、どちらが上にくるものかは判断がつきます。

 そこで私たちは地層の出ている露頭でスケッチや柱状図を書いて、それぞれの場所での地層に上下関係を考えながら、火山灰層と粘土層を追っていくという作業をくりかえすことになります。

 このようにして作られた柱状図をならべて同じ地層をつないだものが柱状対比図(図39)です。この結果、学園都市から西区にかけての地域には少なくとも6枚の青粘土層があることがわかりました。また大沢粘土層はそのうちの一番下の粘土層であり、林崎粘土層、屏風浦粘土層もおそらく下から1枚目と2枚目のものと考えられることが明らかになりました。

西区ハイテクパークの明石累層

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