神戸の自然シリーズ17 神戸の地層を読む2
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6.アカシ象のいたのは何年前?

年代瀾定につかうジルコン

火山灰の中の重鉱物と火山ガラス


 ところで、このアカシ象やメタセコイヤの化石をふくむ明石累層の地層ができたのは何年前のできごとなのでしょうか。

 地層の中にふくまれる化石のなかには、その地層のおよその時代がいつかを推定するのに役立つものもありますが、直接何年前という答えはだしてくれません。

 地層の年代をはかるための方法として最近ではいろいろな方法が考えられていますが、化石や鉱物のなかの放射性同位元素の比率を使うのが、14C(カーボンホーティーン)法やK−Ar(カリウム−アルゴン)法です。14C法は数万年より新しい時代の年代が測定できますが、それより古い年代は測定できません。K−Ar法では数100万年以上の古い年代ははかれるのですが、新しい年代がわかりません。私たちがあつかっているのはちょうどその間の年代の地層ですからこの二つの方法では年代がはかれません。最近ではフィッショントラック法という方法で測定できるようになっています。

 火山灰の中には、火山ガラスとともにいろいろな重鉱物がふくまれています。その一つであるジルコンという鉱物をとりだして年代を測定するのがフィッショントラック法です。

 この方法はジルコンの中にふくまれているウランの原子が核分裂するときにできる傷あとの数をかぞえると年代がわかるというものです。

 火山灰のなかのジルコンはきわめて少ないものですから、測定のためには大量の火山灰を採取する必要があります。私たちはいくつかの地点から火山灰を30kgずつ集めて、京都フィッショントラック鰍フ壇原徹さんに送りました。

 しばらくして、壇原さんから送られてきたデータはつぎのとおりでした。

小寺火山灰 (学園都市)  1.9±0.4 Ma
春日台火山灰 (春日台)  1.6±0.3 Ma
神出T火山灰 (座頭谷)  1.8±0.3 Ma
神出II火山灰 (座頭谷)  3.5±0.6 Ma
西八木T火山灰(西八木)  2.2±0.3 Ma
井吹火山灰 (井吹)  1.6±0.3 Ma
     (Ma は100万年)

 ひとつの値をのぞいて、あとは160万年から220万年の間になっています。この年代はちょうど第三紀鮮新世(せんしんせい)と第四紀更新世(こうしんせい)の境界である170万年の前後です。また、この年代はアフリカで人類の祖先が誕生したといわれる年代でもあります。

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