神戸の自然シリーズ17 神戸の地層を読む2
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7.アカシ象の時代の神戸の自然

図42 アカシ象の予想復元図


 いまからおよそ200万年前、神戸市の西部には大きな湖があり、その北東には扇状地があったこと、その湖のほとりにはアカシ象が生活していて、セコメタイアのしげる森林があったことがはっきりしてきました。

 最古の人類が出現したこの時代の神戸の自然はどんなものだったのかをもうすこしくわしくみていくことにしましょう。

 青粘土層をためた湖は少なくとも現在の播磨平野の南部をすっぽりとおおいつくすことは、地層の分布から明らかになったことです。

 この湖はいったいどれくらいの大きさをもつ湖だったのでしょうか。単に播磨平野だけではなく、もっと大きなひろがりを持つ湖があったのだと考えられます。というのは、明石累層と同じような淡水成の粘土層からなる同じ時代の地層は、大阪平野でも奈良盆地でもいちように分布しているからです。また、淡路島や西は香川県でもみることができ、その湖は「古瀬戸内湖」とでもよぶのがふさわしい広大な大きさをもつものだったと考えられています。

図43 200万年前に奈良から四国まで広がった古瀬戸内湖
(笠間・藤田1957より)



 動物としては、アカシゾウのほかニホンムカシジカ、ルサジカ、シカマシフゾウなどがいました。シフゾウはシカの仲間で西八木海岸から化石が産出して、その発見者である鹿間時夫博士の名前がつけられたものです。シカやゾウは草食の動物ですから、それを食べる肉食の動物もきっといたはずですが、今までのところみつかっていません。私たちが発堀したシカの足の骨のなかにネズミにかじられた跡のあるものがあり、どんな種類かはわかりませんがネズミがいたことも確かです。植物では、メタセコイアのほかにイチョウ、オオバラモミ、モミ、ツガ、マツ、コウヤマキ、ケヤキ、ブナ、コナラ、フウなど100種類以上の化石がみつかっています。その中でメタセコイア、シマモミ、フウなどは現在の日本にはなく、中国の南部や台湾に自生している種類があることと、オオバラモミのようにこの時代に絶滅したものがあるのが特徴です。

 こうした植物からこの時代の神戸は、現在よりやや暖かな暖温帯の気候であったと推定されます。

メタセコイア

オオバラモミ

明石累層の中にふくまれる植物化石

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