神戸の自然シリーズ6 神戸の野鳥観察記
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■4.神戸のウグイス −寄生的繁殖者と犠牲者

4.神戸のウグイス

 ウグイスの姿は知らなくてもさえずりだけはだれでも知っているし、神戸にも多い鳥である。2月になれば、山手の住宅地や西神戸の農村では庭の植込みや生垣などに、そのさえずりがきかれるようになり、ウグイスの訪れが話題になりはじめる。ちょうど梅の開花期でもあるので古くから『梅にウグイス』は絵になったのであるが、この2者は特別な関係にあるわけではない。その後しばらくはさえずりを楽しませてくれるが、いつの間にかいなくなってしまう。山へ移動したのである。庭に来ていた頃、まだ遠慮がちだったさえずりは山に入った頃から本調子になり、やがて繁殖の季節を迎える。それは神戸の山では3月中頃から4月にかけてはじまる。低い山では6月頃まで、六甲の山上では8月頃までが繁殖の季節で、7月頃まではよくさえずる。8月に入るとさえずりはだんだん減って、9月になれば、ときどき思い出したように鳴く程度になってしまう。

 ところがよく注意していると神戸の低い山では秋でも冬でもおだやかな天候の日には盛んにさえずることがある。かつて小部の山間部で秋晴れのおだやかな11月のある日に多数のウグイスがさえずり、まるで春のようなことがあった。その時、すでに来ている冬鳥の幾種かと重なり、妙な雰囲気を演出した。寒さのきびしい12月から2月にかけてもさえずりを聞くことは珍らしいほどでもないから、神戸のウグイスの初鳴日を自信をもっていうことはできない。2月頃から鳴き数がしだいにふえて、3月頃には盛んになるというばく然とした表現にしなければならない。

 町の庭に来るウグイスは早春に限ったものでなく、むしろ数の上では11月頃が多い。オリーブ褐色の地味な色とやぶの中をくぐる習性によって、その姿はさえずりほど人には知られないですんでしまう。また、地鳴きはあの美しいさえずりから想像もつかない地味な声であり、これがウグイスであると知る人も少ない。このような所に出てくるウグイスの場合、冬はほとんどさえずらないものである。冬によくさえずりをきく場所はウグイスにとってはそれなりに環境に恵まれた余裕のある場所のようである。

 神戸のウグイス漂鳥冬鳥とみておけばよいだろう。神戸のウグイスは夏は低地に少なく、山地に多いが、とくに六甲山上には多い。冬は低地や里山に多くなり、山地には少ない。その上、神戸全域の総数は、夏より冬の方がずっと多いから、他地方から冬鳥的に渡来するものが圧倒的に多いと見てよい。近くでは県下中北部の山地、さらに中部地方やそれより北の雪深い地方などから来ているものなどが多いと思われる。10月〜12月低い山で一時的に数を増すのは、神戸を通ってさらに暖かい地方へ移動する旅鳥的なものがふくまれていることを意味している。

 ウグイスは深い林にはあまり棲まない。笹原に低木が混ったような環境が好きである。六甲山は開発地と自然林とが適当に入りまじっていてウグイスに最適の環境が多い山地といえる。山の高さも手頃であり、神戸のウグイスの最多産地になったのである。

 ふだんは低木の繁みやササの中に潜って生活しているが、畑や芝生のような開けた土地には出ない。そして日常の生活では長い距離を飛ぶことはほとんどない。さえずる時には高い枝に全身を見せて長い間止っていることもあるが、たえず尾や翼を活発に動かし、せわしい動作で枝移りしながらやぶをくぐっている。

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