神戸の自然シリーズ6 神戸の野鳥観察記
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■5.ヒヨドリ −圧倒される大群の渡り

5.スズメを追う話

 1977年の3月頃、自宅近くのビラカンサの生垣の近くで、スズメを追いまわすへんなくせをもつヒヨドリが1羽あった。そのヒヨドリは1週間あまり滞在しただけで、その後は見られなくなったが、日に2〜3回はスズメをしつこく追いまわした。ヒヨドリの食性については前にも述べたが、他の鳥を襲ってそれを食べたという記録は知らない。自分よりも小さいモズにさえ追われ、衰弱したヒヨドリがモズの餌食になった例もあるぐらいである.そのおとなしいはずのヒヨドリが、スズメを追いまわすのは、それを捕えて食べるつもりと見るのは無理である。

 そうかといって、この時期では縄張りの争いとも考えにくい。ふつうヒヨドリは自分の巣のすぐ近くにスズメが来ることを認めている。食性はある点ではスズメとヒヨドリはだぶっているが、それを取り合うような場面でもない.第一スズメは何もくわえていない。鳥の行動を人間的な感覚で判断するのはきわめて危険なことであるが、やはり一種の遊技のように見えた。追われるスズメはたまったものでない。追って来るヒヨドリをふり切ろうとサクラ並木の枝の間をぬい、人家の屋根をかすめ、生垣のすき間をつきぬけ、必死に逃げる.ヒヨドリがせまれば悲鳴を上げ、小回りをきかせて振りきろうとするが、ヒヨドリも大きな体に似ず、たくみな急旋回でそれにあわせて、すぐに追いつく.

 捕える意志がないのは明らかである。もし捕えるつもりなら、そのとき鋭い嘴の一撃をくらわせばスズメはもろくも落ちたであろうし、ヒヨドリの脚は小さいとはいえ、スズメぐらいならつかまえることができたはずである。そのどれもしない。嘴を 「パチッ、パチッ」と鳴らすだけである。

 スズメはびっくりして悲鳴を上げる。ついには地面をころがって逃げ、今にも組み伏せられそうな激しい場面まで展開した。振り切られると別のスズメを追い、こんだ枝の中へ逃げ込まれると近くの枝で待つというしつこさであった。この行動は2分余り続き、飛んだ距離を直線にすれば200mにはなると推測した。場所が道路に面していたので、たまたま通りかかった人のために、この遊技は水入りとなった。もし、そのまま続けさせれば、どれぐらい続いたか、スズメが倒れるまでやったかどうか、少し残念に思ったが、スズメはほっとしたことであろう。このヒヨドリもここに書いたような、これほど激しいスズメ追いをやったのはこれ1回だけで、ふだんは、20〜30m追えばあきらめてやめてしまい、何れの場合もスズメに致命的な傷を与えたことはなく羽毛が数枚散ったのが最高であった。

 鳥はときには予想外の行動をとるものである。ただ、本能だ、習性だというだけでかたづかない場面も多い。動物行動学は最近いちじるしく進んできたが、時には説明をつけるのに相当時間がかかり、しかもこじつけのような学説で納得できないようなものもある。スズメを迫ったヒヨドリの行動がどんな意味や目的をもっているものか、私はこの行動について無理にその意見をのべようとは思わない。


ヒヨドリ スズメ目 ヒヨドリ科
 雄雌同色で、頭上の羽毛は細くとがり、先端は灰白色で、いくらか羽冠状になる。耳羽は褐色で喉の方へのびる。体の上面は暗灰色でわずかに禍色をおびる。胸は褐色がかった暗灰色で、灰白色の斑点がある。腹の中央は白い。風切羽は暗褐色で、尾羽も同色である。嘴と脚は黒色で、虹彩は褐色である。
 嘴峰 25〜28mm、翼の長さ 122〜225mm、 21〜24mm、尾の長さ 110〜220mm、開長 350〜420mm、全長 258〜275mm、体重 55〜96g。
 ハトよりも一回り小さく、体は細く、尾羽は長く見える。ふつう雄の方がやや大型である。
 北海道から琉球まで全土に分布する。日本列島周辺では、サハリン、朝鮮半島、中国、台湾などにも分布する。多くの亜種に分けられる。

英語名 Brown-eared Bulbul
学 名 Hypsipetes amaurotis (Temminck)
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