神戸の自然シリーズ6 神戸の野鳥観察記
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■7.キジバト −町に進出した野の鳥

追加記録
 1976年にも同じ松の木の咋年より少し高い位置に巣を作った。同じ親鳥だと思われる。前年と違った点を中心に新たに気のついた事をいくらかつけ加える。

9月19日 朝
 営巣場所の選定に2羽連れ立ってやって来た。巣をかまえる場所を2つ選んでいる。

9月21日(巣作り開始 巣作り1日日)
 巣材を運びはじめた。巣を作る場所は幹の東側に決まった。真上のTVアンテナで盛んにジスプレーを行なう。喉を大きくふくらませ、頭を下げて特有の動作で鳴く。ゴーア、ゴーアとも、キューキューとも鳴いた。ふだん出さない声である。

9月23日(巣作り3日目)
 午前中、巣材運びをしていたがテンポが速い。1〜20分ぐらいの間隔で持って来る。3〜5分間隔のことが多い。8分通り完成、常に1羽が巣にいて、他の1羽が運び、巣作りのしぐさなどは前の年と同じである。

9月25日(巣作り5日目 産卵開始)
 朝の間だけ巣材を運んだ。7時頃雄親が真上のTVアンテナでしきりにゴーア、ゴーアと鳴く。午後になって一時巣を離れたが、ほんのわずかの間で、巣の整備を続けた。17時頃、胸の羽毛の間に1卵が見えた。産卵は15〜17時の間である。タカ型の飛翔はまだ一度も見ていない。営巣開始日から数えて5日目である。去年より少しずつテンポが速い。

9月26日(抱卵1日目)
 午前中はまだ落着きがなく、羽ずくろいをしたり、向きを変えることが多かったが、午後から姿勢も深くなって睡りつづけている。

10月9日(抱卵14日日 孵化開始)
 午後、1羽が孵化しているのが見えた。羽毛も乾き、給餌もうけているから朝おそく孵化したものと推定される。どちらかの親が必ず雛を抱いているのは前年と同じである。15時に交代の1羽が巣に帰ったが雛を抱いている親が巣から出なかったため、いったん飛び去り、10分ほどして再び帰巣して交代した。この鳥は餌をやらない。今日は、初卵を産んだ日から数えて14日目にあたる。

10月10日(育雛2日目)
 朝、新しい卵殻が落ちていた。

10月11日(育雛3日目)
 8時30分、第一回の交代、去年のように、近くに交代の鳥を見るとすぐ巣を出ることはなく、巣の上で交代する。その時、2〜3声鳴き交わすが、その声は雄雌同じである。

10月16日(育雛8日目)
 ときどき巣をあけるようになったが、巣にいる方が多い。夜も巣で眠った。これらは前年と違う点で、前の年では、突然、雛を抱かなくなる日が訪ずれ、その後は、給餌以外、いっさい巣にいなかった。

10月17日(育雛9日目)
 7時40分まで雛を抱いた。雛は大きく、親の胸の下から半分以上はみ出している。羽毛ののびが目立つ、夜は雛を抱いて眠る。

10月18日(育雛10日日)
 夜にもどらなくなった。給餌のときだけしか巣にもどらない。

10月21日(育雛22日目)
 雛は巣から離れて止まっていることが多い。羽づくろいをしたり、盛んにのびをする。

10月22日(育雛14日目)
 早朝、雛の1羽が木から落ちた。のびか、はばたきをしていてバランスをくずしたのではないかと思われる。間もなくネコの餌食になるはずである。子供のおもちゃになるかも知れない。自然に従ってそのまま放置するのが最も正しいと思ったが、ネコも自然の動物ではないし、今までつき合って来たその鳥をそのままにはできなかった。結局、巣に戻してやった。もう十分に速く走ることができるので捕えるのに苦労した。この作業を親鳥は真上のTVアンテナで見ていたが、巣に入れるのを待って、すぐ給餌に巣へ帰る。私はまだその場を離れていないので、巣との距離は約2mしかない。

 雛は巣から20cm離れた枝にとまることが多くなった。夜もそこで眠る。雛2羽は離れている。

10月24日(育雛16日目)
 親鳥は近くでよく鳴くようになり、タカ型の飛翔もよく見せるようになった。雛の巣立ちをうながしているようである。雛は巣より20〜50cm離れた枝にいて、餌をもらう時にだけ巣にもどる。のびと、はばたきを盛んにする。

10月26日(育雛18日目)
 雛は巣を離れ西のメタセコイアの木に移ったが、夜は巣にもどり、近くの枝で眠る。首のまわり、頭上にわずかな黄色の初毛が残るだけで、雛というより、もう立派な若鳥で、飛ぶこともできるようになったわけである。

10月27日(育雛19日目)
 早朝、巣上にすでに姿はない。例のメタセコイアに移動しているらしいが、姿は見えない。夜も帰らなかった。巣立ちである。

 近くには幾組かの巣立ち雛がいるので、この雛の、その後の行動は明らかでない。

 孵化してから19日目である。去年より少し遅れたが巣立ち雛はそれだけ充実していた。

 以上の例から見るとキジバトの卵は、抱卵をはじめて14日目に腑化し、雛は、14〜19日の養育で巣立ちをする。抱卵日数や育雛の日数は気温や親鳥の行動により多少のずれが生じるものであるが、大体の見当はついたと思われる。

 雛や卵を抱いている親鳥は、眼を閉じて眠っていることも多く、のんびりしているように見えるが、やはり野生の動物であって、鋭敏な神経を持っている事がよくわかる。人間の活動音には馴れて鋭くなっているが、ネコの声やその足音には羽毛をひきしめて緊張した。視力もすばらしい。同じように、一瞬緊張し、空の一点を擬視することがよくあるが、その時はきまって、トビかカラスが上空を飛んでいた。それも、私たちなら双眼鏡を使わなければ、わからないほどの遠方を飛んでいるときでもそうである。しかも、枝葉の繁みを通してかすかに見える空の中から見つけ出しているのだから驚さである。町のキジバトも先天的に自分の天敵を知って対応していることがよくわかる。野山のキジバトが人に対して持っている恐怖心も同じようなものであろうが、町にすむキジバトからは著しく減ってしまった。

 ここに紹介した2例のキジバトの親鳥は、70〜80mほど離れた所の大きなクサギの株に出かけ、その実をよく食べた。巣から飛出して一直線にその木へ行くこともあった。雛にもこの実を多く与えているようで巣の中にこの実の幾粒かが落ちていることがあった。キジバトはほとんど純粋に近い植物食の鳥である。広範囲の木の実を食べるが、水分の多い柔かい実も、乾いた固い実も食べる。さらに、穀類、豆類やいろいろ種子などを食べるため農家では畑を荒らす害鳥としての悪評が高い。

 私の家の近く、200〜300mの範囲には、私が知っているだけでも六つがいのキジバトが棲みついている。この辺りでは、繁殖の最盛期が、春よりむしろ秋に多く、九月頃の産卵例が最も多い。この時期になると毎年3つか4つの巣をどこかで見かける。中に入れない屋敷の庭で営巣し、目の届かぬ所のものもあるだろうから、これで全部ということでもないと思っている。それからみても毎年毎年、何羽かの雛が成鳥にまで発育しているはずだが、数は一向に増えない。テリトリーの関係で、今の数が限度に近いらしい。私もこのぐらいの数がちょうどよいような気がする。目ざわりになるほど多くもないし。その声がやかましすぎるほどの事もない。また探すのに苦労するほど淋しくもない。早朝、目が覚めきらないとき、のどかで一種のけだるさを感じようなこの鳥の声は気持ちよいめざましとなり、山にいるような壮快な気分にしてくれる。たいせつにしてやりたい鳥である。

 野生の鳥類は、卵や雛を天敵によって失う率がきわめて高い。神戸の山野で見つけたキジバトの場合、8割は外敵によって卵や雛は消失している。それにくらべると市街地は人やネコの危害さえなければ、野鳥にとってかえって安全な場所なのかも知れない。


キジバト ハト目 ハト科
 雄雌同色で、頭上は灰色で後頭部はわずかに赤味をおびる。頸はバラ色がかった灰色で、頸側に黒と青味がかった灰色の数条の横縞の模様がある。背は灰色で、肩羽、中小雨覆は灰色であるが、赤錆色の幅の広い縁りがあって、鱗模様になる。初列風切は暗灰色で羽の端と外縁に赤錆色の縁りがある。胸と腹は明るい灰色がかった褐色で、腹は淡褐色である。腰と上尾筒は青灰色で、下尾筒は淡灰色、尾は暗灰色であるが、先端は淡灰色である。眼の周囲は赤紫色で、虹彩は橙色だが黄味の強いものから赤味の強いものまである。嘴は灰色。脚は赤紫色である。
 嘴峰 16〜19mm、翼の長さ 180〜195mm、 26〜28mm,尾の長さ 120〜145mm、開長 525〜575mm、全長平均 318mm、体重 220〜280g。
 雄雌の体格はほほ同じで、その識別は難しい。飼育種のドバトよりわずかに小さい。飛翔の姿もドバトより敏捷性があり、羽ばたきも強く、滑空する時の翼もいわゆる流線形でスピードもある。
 北海道から琉球にかけて全土に分布する。北海道では夏鳥的で、屋久島以南の亜種はリユウキュウキジバトという。日本列島周辺では、シベリア南部から中国にかけ広く分布するが、一部はヒマラヤをこえてインドにひろがる。台湾にも生息する。

英語名 Turtle Dove
学 名 Streptopelia orientalis (Latham)

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