神戸の自然シリーズ6 神戸の野鳥観察記
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■1.卵や雛を守る親鳥
帽子を奪ったフクロウ 町から見た高取山

4.帽子を奪ったフクロウ

 顔が平く、目が二つとも前向きについているのは、夜間に獲物を集中的に追うのに適しているというものの、その顔つきが、ふつうの鳥とはちがった独特の雰囲気を漂わせる異相である。

 カラスほどの大きさで、体全体が褐色がかって目立たない鳥である。

 夜行性の代表格だが、目は昼間もよく見えるので、人が近づけば、こちらより早く気づいていて、知らない間に逃げている。

 「襤(ぼろ)衣着て奉公」と鳴くといわれている。「ゴロツク、ホーホー」と低い声で鳴く。「ホウホウ」 と明るい調子で鳴くのは、アオバズクという小形のフクロウで数は多い。

 もう30年ほど前の古い話であるが、野鳥の人間に対する積極的な攻撃の例を紹介したい。

 板宿から高取山へ登る道から少し脇へそれた丘の上、今の平和台町のあたりにあたる。その頃、この辺りは松林や畠、雑木林がつづき、人家はふもとまでなかった。

 当時、中学生であった私は数人の友だちと昆虫採集にここを訪ねた。この付近は、コジャノメヒメジャノメが飛び交い、クロアゲハはツツジの花を訪ねるというように自然は豊かであった。ツバメの姿もあった。五月のある曇った日の放課後である。

 林の縁りの畠を耕している老人に出会ったが、その人は怒ったように私たちに話しかけてきた。その内容は次のようである。

 一時間ほど前、いきなり背後から頭上にバサッと何かがおおいかぶさった。あわてて頭を押さえようとしたが間に合わず帽子が空中へ舞い上ってしまった。見ると鳥が帽子を持って行くではないか。20mほど先で帽子は捨てたが、いきなり襲われてびっくりしたのと、帽子を取られたのが癪でならない。取られたのはここで、捨てたのはこの場所であると、現場まで戻って説明してくれた。そして、その鳥を見つけたらやっつけてほしいとつけ加えた。その鳥というのは説明からみてフクロウに間違いはないと思われた。

 フクロウは獲物に気づかれないように近づく必要から、羽毛が柔らかく、そのため飛ぶときもほとんど音がしない。だから、背後からの接近に、この人はまったく気づかず、いきなりバサッとやられたと感じたらしい。

 私たちはこの話を聞いてまわりの森を探したが、結局、フクロウは見つからなかった。あるいは、こちらの人数に圧倒されてかなわぬ相手と見て逃げ去ったのかも知れない。

 数日後、フクロウの雛が届けられた。場所を聞くと、ちょうど先日の場所である。雛の大きさから見れば、まだ移動できないから、農夫に会った日にもその近くにいたはずで、そこで働く農夫を、自分の縄張りへの侵入者、あるいは雛を奪いにきた敵とみて、隙をついて攻撃に出たものらしい。ところがつかんだのは帽子であり、一回目の攻撃でおじ気づかない相手を手ごわいとみて、あきらめたのではないかと思われる。ふつうなら頭を蹴って舞い上るところである。気の弱い相手なら、これで十分効果はあるはずである。

 別の話になるが、禅昌寺の西側の須磨アルプス登山口の近くで、フクロウに頭を蹴られて、かすり傷を負ったという老人の話を聞いた事がある。山菜をとっている老人を背後から急襲するといった同じ手口である。

 フクロウ類は猛禽の中でも積極的な攻撃に出る方だという。襲われた話もときどき耳にする。

 私はフクロウの巣を調査するため、巣の近くへ何度か近寄ったが、近くにいる親鳥は人の気配を感じたら、ただちに逃げ去るのがふつうであった。一般に親鳥が最も攻撃的になるのは巣立ち雛に近づいたときである。雛を計測するため取り押さえたこともあるが、雛が威嚇のために出す「パッ、パッ」というような音に対しても親鳥はすぐ上の枝までくるだけで、頭上2mほどの所まで急降下して通過したのが最も強い攻撃例であった。

 鳥とのつき合いの長い私の動作は、鳥にとっては自分のとる行動の先を見通されているとでも思うのか、攻撃しにくい相手であることを直感的に感じるらしい。それとも、私の出会ったいくつかの個体が、たまたま、憶病なものばかりであったのかも知れない。フクロウに襲撃されたり、されそうになった人があれば、その経験談をぜひ聞かせていただきたい。

 神戸の野山でふつうに見られる大型猛禽はトビである。マツクスの大木の高い枝に巣を作る。巣立ち間際の雛のいる巣に何度か登ったことがあるが、頭上数メートルほどまで急降下して通過するのが最高で、多くは、上空をさわぎながら旋回しているだけである。しかし、爪でかかれてけがをしたという話を聞いたことがある。個体差もあるだろうし、地方によってはそのような勇敢なトビが多いのかも知れない。


フクロウ フクロウ目 フクロウ科
 雄のほうが大型だが、羽毛の色による違いはない。体の上面は、ほほ暗褐色でクリーム色や白色の不規則な斑点が散在する。顔は汚れたクリームがかった白色で、胸から腹にかけて汚れた感じのクリーム色で、各羽毛には暗褐色の太い軸斑がある。虹彩は暗褐色、脚は趾まで羽毛がある。嘴は汚黄色。
 嘴峰 22-25mm、翼の長さ 330-338mm、尾の長さ 220-260mm、 44-50mm、開長平均 990mm、全長平均 476mm、体重平均 695g。
 北海道から九州までほぼ全土にわたって分布する留鳥である。北に行くほど色が淡くなる傾向がある。

   英語名 Ural Owl
   学 名 Strix uralensis Pallas

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