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| III.自然とのふれあい−蝶の育て方− 3.蝶の育て方(4) |
(6)飼育例−3 オオムラサキ
オオムラサキの幼虫はエノキの葉を食べて育ちます。エノキは水あげが悪く、葉や枝を切るとすぐ枯れてしまいます。したがってオオムラサキを飼育するためには、手近にエノキの木があるか、エノキの鉢植えを準備する必要があります。
8月14日、H氏からオオムラサキの幼虫5頭がとどきました。鉢植えのエノキで飼うことにしました。10mmくらいの、まだ小さい幼虫です。夜中に電燈をつけてみると、さかんに葉をたべていました。朝になると葉の先に一頭ずつ、葉の根元の方向をむいてとまっています。それぞれ自分の葉をきめていて、食事は別の葉まで出かけます。そしてまちがいなく元の葉へもどってきます。枝の上を虫メガネで見ると細いくもの糸のようなものがみえます。幼虫はこれをたどって元のところへ帰ってくるのです。翌日も夜中に電燈をつけてみると食事中のがいました。
8月26日。一頭が脱皮。12mmで大きさはあまりかわっていません。11月8日、20mmくらいに成長。色はまだグリーン。11月27日。エノキの落葉のうらに、茶色に変った幼虫がみられました。こうして保護色で越冬するのです。
翌年4月16日。植木鉢のエノキに網をかぶせていたのですが、網の内側に幼虫が上っています。汗ばむほどの天気です。幼虫がついたままの網をそのまま庭木のエノキの枝にかぶせました。4月22日、幼虫は数センチにのびたエノキの葉に1頭、他は枝のまたのところにピックリくっついて動きません。
4月27日。1頭の幼虫はグリーンにもどりました。これから食欲はさかんになり、終齢幼虫は60mmくらいになります。正面からみた顔はネコに似て愛きょうがあります。このころになると縄張り意識をもちます。2頭の幼虫が葉を食べていました。1頭が移動をはじめました。他の1頭に近づいていきます。ニアミスに気づいた後者は半身をもちあげて、頭を左右にはげしくゆすりました。縄張りを侵されて怒っているのです。反射運動にすぎないのでしょうが、この幼虫の脳に判断力や感情があるような錯覚さえおこります。はじめのやつは退却しました。
6月2日、幼虫はエノキの枝からぶらさがって蛹になりました。指で軽くふれると、力づよくはねるように、激しく体をゆすります。
6月15日、羽化したのは♂、20日に♀が羽化しました。年1回の発生です。
蝶の育て方を三つの例でお話ししましたが、創意をこらして工夫することも楽しいことです。
モンシロチョウのあおむしは、ダイコンの葉やハクサイ、キャベツなどを食べるので、食物に苦労することはありません。飼育の容器はプラスチックの透明な箱にフタがついていれば十分です。
オオムラサキの食樹エノキがあれば、その枝に網をかけて、テングチョウやゴマダラチョウを飼うことができます。網の中にフンがたまりますから毎日1回、網の口をあけて清掃してやります。
アオスジアゲハは公園にあるクスノキにいます。庭にホトトギスがあれば、Cの字に体をまげた毛虫がいます。ルリタテハの幼虫です。ミカンの木にはナミアゲハやクロアゲハがいます。コムラサキはヤナギの葉をたべます。これらの食草・食樹はビールビンや細首の花ビンにさしてやると、よく水をあげます。ビンの口が広すぎると、そこから幼虫が墜落して溺死することがありますから、綿などをつめて下さい。
キアゲハの幼虫は、黒と緑の横ジマがある美しいものです。庭にうえたパセリやミツバに発見することがあります。このような食草は植木鉢で育てると便利ですが、相当な分量を必要としますから、タネから大量に育てるのがよいと思います。
蝶の生活史は、種それぞれに多彩です。モンシロチョウは年5〜6回、ナミアゲハやキアゲハは3〜4回発生しますが、ギフチョウ、オオムラサキ、ツマキチョウ、ミヤマセセリなどは年1回です。
越冬の姿は、モンシロチョウやナミアゲハなどは蛹で、オオムラサキやゴマダラチョウは幼虫で、シジミチョウの類はほとんどが卵で、テングチョウやタテハの類の多くは成虫でといったように様々です。年2回以上発生する蝶では、春・夏・秋の季節それぞれに蝶のハネの模様が変化するものもあり、大きさの変るものもあります。
♂♀でハネの模様の全くちがう蝶もいます。カラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハ、オオムラサキ、ツマキチョウなどは、♂の方がハデで美しくよそおっています。
このように変化が多い蝶の生活史を観察すれば、新しい経験を楽しみ、生命のふしぎさ、自然の偉大なこと、神秘さに触れることができるのです。
六甲山の高さのおかげで自然の様子に変化が多く、したがって植物の種類が多く蝶の種類が多いのでしょう。私はいまさらながら、自然にめぐまれた神戸をありがたく思います。豊かな心の人間が育つと思います。
この神戸で自然にしたしみ、自然を容易に体験できるこの特権を、私達は大いに活用すべきでしょう。
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