プールのトンボたち 新・神戸の自然シリーズ1 神戸のトンボ
 
■プールで見られるトンボの特ちょう

 トンボの幼虫(ようちゅう)であるヤゴは、水の中で生活しています。だからといって、水さえあればどこにでも生活できるというものではありません。ですから、プールでみつかるトンボも、限られた種類になってきます。その理由は、大きくわけて、つぎの三つあります.
1。トンボの卵の産みかた
2。トンボの生活と季節
3。トンボの生活する環境


●卵の産み方
  トンボの成虫は、子孫(しそん)を残すために卵を産みます。卵から生まれ出てきたヤゴは、その時から水の中に入り、生活をはじめます。実は、この卵の産み方に、大きく分けて二種類あって、これが、プールにやってくるトンボの種類をきめる、原因の一つになっています。その一つは植物体の中に産卵する方式で、植物がないと産卵できません。もう一つは水面上や空中から卵をばらまく方式で、産卵に植物を必要としません。

 下のビデオで、産卵の方式を確認してみましょう。

水面上に直接産卵
産卵に植物が必要ないタイプです

植物体の中に産卵
産卵に植物が必要なタイプです

←産卵のくわしい解説はここをクリック

 プールには植物がありませんから、植物に卵を産みつけるようなトンボは、プールでは卵が産めません。つまり、ヤゴはふつうは見られないことになります。

 このなかまには、イトトンボのなかまアオイトトンボのなかまカワトンボのなかまムカシトンボヤンマのなかまなどが入ります。ですから、これらのトンボのヤゴはふつう、プールではみつからないはずです。

 では、それ以外のトンボは、すべてプールに来ることができるかというと、そうではありません。プールには、泥の岸辺がありませんから、そういうところに卵を産むトンボは、同じように来ることができません。またプールは深いので、浅いところに卵を産むトンボもだめです。また、川のような、流れにしか卵を産まない多くのサナエトンボなどのトンボもだめです。

 結局、プールで卵を産めるのは、流れていない、深い水の表面に、直接卵をばらまくような産み方をするトンボということになります。これらのおおくは、トンボ科のトンボです。


●トンボの生活と季節
 みなさんは、サクラの花が春にだけ咲くことを知っていると思います。またモミジは、秋に赤くなります。セミは夏に鳴きますし、エンマコオロギは秋に鳴きます。日本にすむ多くの生き物は決まった季節に現れるものが多いのです。これは、日本の冬のきびしさをのりきり、暖かい間に子孫を残しておこうとする、生き物たちのいとなみだといわれています。

 トンボには、春に成虫が現れてすぐに卵を産み、夏の間に幼虫が育って、そのまま冬をこし、次の年の春に成虫になるような生活を送っているものがあります。

 また、夏のはじめに成虫が現れて、秋に卵を産み、卵か、小さな幼虫で冬をこし、次の春に幼虫が育って、夏のはじめに成虫になるものがあります。

 さらに、春から秋まで、ずっと成虫がみられ、いろいろな大きさの幼虫で冬をこすトンボもいます。成虫で冬をこすトンボさえいます。

 さてみなさん、ここで考えてみましょう。プールは夏にみんなが泳ぐために使います。そのときには消毒をするための薬を入れます。つまり、このときにはプールでトンボは生活できないということになります。ということは、いまお話しした、いろいろなトンボの生活のしかたのうち、どのタイプのトンボが、プールを利用できると思いますか?

トンボの生活と季節
(1)と(2)ではどちらのタイプの生活を送るトンボがプールを利用できるでしょう?

 

 わかりましたか?。夏に成虫ですごし、プールが使える冬の間に、卵か幼虫ですごしているトンボたちです。アカトンボのなかまシオカラトンボショウジョウトンボなどがあてはまります。サナエトンボのなかまの多くは、成虫が春に現れ、夏を幼虫ですごしますから、プールではまず見られないということになります。


●トンボの生活する環境
 ヤゴは水の中で生活しています。でもトンボには、それぞれ好みの環境があります。これは、長い歴史の中で、いろいろなトンボが、さまざまな生活場所に広がっていき、そこで生活するのに適した体のつくりを身につけてきたために、逆にプールのようなところへは卵を産みにくることができなくなってしまったためです。

 カワトンボや、多くのサナエトンボは、川のような水の流れのあるところにしか現れません。ムカシヤンマは山の水のわき出たところにしか現れません。ムカシトンボは高い山の流れの速い川にしか現れません。ハッチョウトンボはじゅくじゅくした湿地にしか現れません。

 プールは、開けた、明るい環境の場所です。こういうところが好きなトンボもいます。シオカラトンボショウジョウトンボ、アカトンボの中でもコノシメトンボタイリクアカネなどです。

 このようなわけですから、プールで見られるトンボは、ある程度種類が限られてくることになります。神戸市や西宮市の小学校で行われた「プールの生き物調査」の結果からは、次のようなトンボが多くみつかっています。

プールでよく見つかるトンボの成虫


■プールのトンボたちの運命

 もし、私たちが、プールにいるトンボたちを助けなかったら、彼らはいったいどうなると思いますか?

 夏が近づくと、みなさんがプールを利用するために、プールのそうじが行われます。プールを長い間使っていないために、たくさんの生き物がプールで増えています。

 この中には、顕微鏡(けんびきょう)で見なければ見えないほど、小さな生き物がたくさんいて、その中には、人間の健康に害を与える生き物もいるかもしれません。とくにプールは、みなさんが裸に近いかっこうで入り、目や口や鼻にも水がたくさん入ることがありますから、清潔にしておかなければなりません。ですから、プールをきれいにそうじして、消毒しておくことは、必要なことです。

 でもそのときに、プールの生き物は、全部死んでしまいます。

 同じようにプールにいる、ゲンゴロウ、ミズカマキリ、マツモムシなどの成虫は、空を飛ぶことができますから、プールを洗いはじめたら、きっと飛んでにげることでしょう。でも、トンボの幼虫はにげることができません。

 プールに集まってくるトンボの多くはアカトンボのなかまです。アカトンボは、だいたい6月に幼虫から成虫に羽化します。

上2枚:プールのヤゴ救出作戦
掃除の前にヤゴを救出する。
[神戸市内の小学校にて、2002.6.]
神戸市環境局提供

右:羽化に失敗したヤゴ
ウスバキトンボ
神戸市内の小学校のプール


 アカトンボの運命は、プールのそうじが始まる前に羽化できるかどうかにかかっています。もし、プールのそうじが始まる前に羽化できれば、大空へ飛んでいって助かります。でも遅れれば全滅することになります。やっとのことで、都会の中で見つけた子どもをふやすための場所なのに、きっと卵を産んだトンボたちも、残念に思うことでしょう。

 では、プールのそうじが、トンボが羽化するときより遅ければそれでよいかというと、実はそれだけでは不十分なのです。

 プールにやってくるトンボたちは、ほとんどすべて倒垂型(とうすいがた)の羽化をし、何かにしっかりとつかまらないと羽化することができません。プールの壁はまっすぐになっていて、しかもよくすべるために、トンボは壁につかまることができず、水の中に落ちて死んでしまうことが多いのです(上の写真)。

 みなさんがプールの生き物を調べたことがあるならば、赤い色に変わって、水に浮かんで死んでいるヤゴを、みたことがあるかもしれません。これは羽化に失敗して死んだヤゴたちなのです。プールは、トンボにとって、決してすみよい場所ではないのです。

 みなさんが、プールの生き物を助けることはとても大切なことです。プール調査の日には、できるだけたくさんの生き物を助けてやってください。そして、うまく飼う自信がなければ、近くの池や学校のビオトープなどににがしてやりましょう。



Revised after 'http://www.odonata.jp/forpupil/poltombo.htm'
and 'http://www.odonata.jp/forpupil/polfate.htm'