トンボってどんな生き物? 新・神戸の自然シリーズ1 神戸のトンボ
 
■トンボのグループ分け

 トンボのなかま(正しくはトンボ目(もく))は、世界に5,500種類くらいいるといわれています。そしてそれらのトンボは大きく次の三つのグループに分けられています。
  1. 均翅亜目(きんしあもく)
  2. ムカシトンボ亜目(むかしとんぼあもく)
  3. 不均翅亜目(ふきんしあもく)
 これらは、はねの形と腹の太さなどの特ちょうで簡単に見分けることができます。


トンボの三つのなかまの代表的な種類


 均翅亜目(きんしあもく)は、ふつうイトトンボとかカワトンボとかいわれているなかまです。4枚のはねの形がほぼ同じで、腹部も細く、弱々しい感じです。全部ではありませんが、はねをたたんで止まる種類が多く、4枚のはねが重なります。

 不均翅亜目(ふきんしあもく)は、ふつうトンボとかヤンマとかいわれるなかまです。前後のはねの形がちがっていて、特に後ばねのつけねの部分が角ばっています。また腹部は太く全体にがっしりとしています。はねはほとんどの場合、広げて止まります。

 ムカシトンボ亜目(むかしとんぼあもく)のトンボは、世界にたった2種類しかいない、めずらしいなかまです。世界で、日本とヒマラヤだけにいます。このトンボは、はねが前後とも同じような形をしていて均翅亜目に近く、腹部はがっしりしていて不均翅亜目に近い、ちょうど中間的な形をしています。三畳紀(さんじょうき)という今から2億年くらい前の地層から、このなかまの化石が出ることで有名です。

均翅亜目のニシカワトンボ
はねをたたんで止まる

不均翅亜目のマダラナニワトンボ
はねを広げて水平に止まる

均翅亜目のアオイトトンボ
はねを広げて止まるものもある


不均翅亜目のサラサヤンマ
はねを広げてぶら下がるように止まる


■卵から羽化まで

●卵
 卵をうむことを産卵(さんらん)といいます。トンボはいろいろな方法で産卵します。産卵のくわしいことは別のページで解説しています

 卵から幼虫が出てくることをふ化(ふか)といいます。卵は10日くらいでふ化するものから、100日以上かかるものまであります。ふつう、卵で冬を越すものが、冬眠するために、卵の期間が長くなっています。

 卵で冬眠するトンボには、アカトンボのなかま(正しくはアカネ属といいます)、アオイトトンボのなかまルリボシヤンマのなかまなどがいます。春に冬眠からさめると幼虫がふ化し、アカトンボやアオイトトンボは100日前後で羽化して親のトンボになります。ルリボシヤンマのなかまは寒いところに多いので、幼虫でさらに冬を越すのがふつうです。

 それ以外のトンボは、ほとんどが幼虫で冬を越し、春から初夏にかけて親になります。日本では3種類だけ、成虫で冬を越すトンボがいます。ホソミイトトンボホソミオツネントンボオツネントンボです

●幼虫
均翅亜目のオオカワトンボの幼虫
腹部の先の3本の突起が尾鰓(びさい)

不均翅亜目のクロスジギンヤンマの幼虫


 幼虫はふつう水の中でくらします。9〜14回くらい皮をぬいで[脱皮(だっぴ)といいます]、羽化します。幼虫でいる期間は、短いもので1カ月あまり、長いものでは5〜8年という記録があります。

 幼虫にはいろいろな形をしたものがあります。これは水の中でまわりの状況にとけ込んで、魚など、トンボを食べる生き物に見つからないようにうまくかくれるためです。

 トンボは幼虫も成虫も肉食です。幼虫の時代には、アカムシなどの小さな昆虫をはじめ、エビなどの小動物を食べています。エサをとらえるときは、下唇(かしん)を目にもとまらぬ速さでのばし、先にあるカギではさみこみます。その後、クロスジギンヤンマなどでは、肛門のまわりにある肛錐(こうすい)とよばれる先の鋭い器官を使って、獲物を攻撃し、弱らせます。エサをとらえるシーンをビデオで見ることができます

下唇をのばしエサをとらえた瞬間
クロスジギンヤンマ幼虫

肛錐で捕らえた獲物をさらに攻撃
クロスジギンヤンマ幼虫


 幼虫はエラで呼吸をしています。ですから空気をすいに水面に出る必要がありません。しかし反対に、水の中の酸素がなくなると死んでしまいます。ですからよごれた水では生活ができないのです。

 エラは直腸(ちょくちょう)とよばれる肛門のすぐ内側のところにあります。おしりから水をすいこんで呼吸をしているのです。均翅亜目の幼虫には尾鰓(びさい)というエラがあって、それで呼吸しているといわれていますが、これが取れても生きていますので、その役割についてははっきりしないところがあります。

 トンボにはさなぎの時期はありません。不完全変態(ふかんぜんへんたい)をする昆虫です。

●羽化
直立型の羽化  ヤマサナエ

倒垂型の羽化  ヨツボシトンボ



 幼虫から成虫が出てくることを羽化(うか)といいます。トンボの羽化には大きく分けて二つのタイプがあります。

 一つは直立型(ちょくりつがた)といって、上半身を出すときにまっすぐ立ち上がるタイプです。このタイプの羽化をするものは、地面や岩の表面などで羽化することができます。

 もう一つは倒垂型(とうすいがた)といって、上半身を出すときに、後へ大きくのけぞるタイプです。このタイプの羽化をするものには、植物の茎のような「つかまるもの」が必要です。ですから、何もないプールのような所ではうまく羽化できません.。倒垂型の羽化をビデオで見ることができます


■成虫について

 羽化したばかりの成虫を「テネラルな成虫」といいます。テネラルな成虫は色も白っぽく、体もやわらかくて弱々しい飛び方しかできません。羽化して一日ぐらいたつと、しだいに体の色もこくなり、体も固くなって、しっかりと飛べるようになってきます。

 それでもしばらくは、交尾(こうび)や産卵はできません。この時期をふつう未熟期(みじゅくき)とよびますが、少し専門的な本には前生殖期(ぜんせいしょくき)とか前繁殖期(ぜんはんしょくき)と書いているものもあります。この時期のトンボは、ふつう水辺にすがたを現すことなく、水辺からはなれた林や草地で過ごしています。アキアカネなどは100km以上も移動して、高い山に登ったりします。

テネラルなリスアカネ
まだ体の色もうすく、はねも光っています。はねの先のかっ色部分も淡い色です。

未熟なアキアカネ
アカトンボですが、まだ体は赤くなっていません。これから高い山へ登ります。


 成熟(せいじゅく)すると、成虫は水辺にすがたを現すようになります。水辺にたくさん集まっているのは、多くの場合オスです。メスは、産卵の時だけ水辺にやってくるものが多いのです。

 水辺のオスはメスが産卵にやってくるのを待っています。そして、産卵にやってきたメスを見つけると、一気にダッシュしてメスをつかまえ、連結し、交尾(こうび)します。連結したすがたを昔は「おつながり」といったりしていましたが、最近は英語の「タンデム」というのをよく使います。

 交尾のすがたは独特で、ほかの昆虫とはずいぶんちがいます。トンボのメスの生殖器(せいしょくき)は、ほかの昆虫と同じように腹部の先にありますが、オスの生殖器は二つに分かれています。一つは精子(せいし)をつくる精巣(せいそう)で、これは腹部の先にあります。もう一つは交尾に使う副性器(ふくせいき)で、腹のつけね(腹部第2,3節)にあります。ですから交尾は、オスの副性器と、メスの生殖器が結合して行われるので、輪のような形になるのです。これはトンボにしか見られない大きな特徴です。

 オスはこのように、精子をつくる場所と、交尾をする器官がはなれていますので、、精子を精巣から副性器へ移す必要があります。これを移精行動(いせいこうどう)といいます。トンボによって、飛びながら行ったり、止まって行ったりします。

タンデム:グンバイトンボ

移精行動:シコクトゲオトンボ
腹部の先と副性器をくっつけています(矢印)。
交尾:マユタテアカネ

交尾:アオイトトンボ


 トンボの成虫は、飛ぶことにかけては天才的な能力をもっています。交尾の姿勢も、このようになっておれば、オスもメスも飛ぶ方向に頭を向けることができ、すばやく飛べます。ほかの昆虫では腹部の先をくっつけると頭が逆方向になるものが多く、交尾中はうまく飛べません。

 同じ位置で停止飛翔(ていしひしょう;ホバリングともいいます)したり、急に向きを変えたり、ある時はバックしたりします。多くのトンボは飛ぶときに前ばねと後ばねを交互にはばたかせています。

 大きな目は、飛びながらエサを見つけるのに適しています。空を飛ぶ小さな昆虫を見つけ一気に近よって、食べてしまいます。クモは多くの昆虫の大敵ですが、トンボの中には巣をはっているクモをつかまえて食べるものがいます。

 トンボが空を飛ぶ動くものに近よるという習性を利用してつかまえるのが、「とりこ」とか「ぶり」とかいわれる方法です。私たちの子どものころは、60cmくらいの糸に両端に小さな石を結びつけ、それを銀紙でつつんだ「ぶり」を用意し、夕方、ヤンマの飛ぶ前方に放り投げて、エサと思って近づいたヤンマが糸にからまって落ちてくるのをつかまえました。

ホバリングするマダラナニワトンボ
前後のはねを交互にはばたかせている


産卵にやってきたマユタテアカネ
やはり前後のはねを交互にはばたかせている

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