学校ビオトープへ植栽する水生植物を考える 神戸の自然シリーズ14 神戸の水生植物


■はじめに

 ここでは、「ビオトープ」の中で、特に「学校ビオトープ」に焦点を絞って、その植栽種の選定、維持管理のあり方について述べてみましょう。ここに書かれてある内容は、「ビオトープをとりまく諸問題について」に記述されている視点をもとにしています。


■学校ビオトープの二つの観点と維持管理のあり方

 従来から「学校ビオトープ」とよばれている施設には、次の二つの観点があると考えられます。
  1. 学校につくるビオトープ(もともとの自然環境を復元する)の整備
  2. 野生植物の教材園または、体験学習用施設の造成
 このうち、1.の観点に立ちますと、立地および面積が重要で、環境の整備を長期間の展望ですすめる必要があります。立地は、学校外の周辺自然環境との距離や位置関係が重要なファクターになり、面積は広いほど一般的に有効であると考えられます。

 一方、2.の観点に立ちますと、本来のビオトープでないことを認識し、目的別に整備を考える必要があります。多くの場合、土底の水深の浅い池に野生植物の水生および湿生植物を植え、メダカなどを放育しているようです。神戸市域および近郊での現状は、2.の施設を「学校ビオトープ」または「ビオトープ池」と称しているケースがほとんどですが、これらの施設は「ビオトープ」本来の形にはなり得ないもので、学校の維持管理に大きくかかわる施設となると考えられます。

 これら二つの観点に基づく学校ビオトープは、その維持管理方法に大きな違いがあります。そこで、それぞれの維持管理の基本的指針について述べておきます。


1.「自然環境復元型」の場合の管理指針

 地元に従来から生育している種を導入し、その後は自然状態(人為的管理をしない)で、動向を長期間見定める必要があります。それは、池を造成し立地をととのえても、野生植物の生育は土質、水質以外の複雑な要因が作用して、自然状態下(自生池)のように正常に繁茂するとは限らないからです。


2.「教材園型」の場合の管理指針

 この場合、教員等による維持管理によって、植生を持続させていくことが前提となります。そこで必ずしも直植えとはせずに、鉢、ポットなどに植え込み、それを沈めるなどの方法を考えるべきでしょう。大形種の導入などの場合、特に有効な手段といえます。


■植栽する植物種の選定方法とその基準の考え方

 では次に、学校ビオトープに導入する種について考えてみます。種の選定については、地域の生物多様性の保全に配慮すれば、1.、2.とも同じ考え方になります。

 まず、地域の自然生態系の立脚点に立って植栽する種を選ぶことが基本となりましょう。貴重種(絶滅危惧種等)や自生地以外での生育のよくない種(生育条件の難しい種)をひかえ、普通種でかつ幅広い生育条件下で生育可能な種を少量導入しましょう。

 基本的な構成として、その地域に自生している普通種のうち、抽水、浮葉、沈水の3つ生育形より2、3種ずつ選んで導入するのが望ましいでしょう。

 そのためには、まず地元(校区内)や近くのため池を調べ、生育種を確認するなどしてください。植栽種はその中から選定することになりますが、野外からの採取は慎重に行い、生育地名(池名)の記録を必ず残すようにしましょう。台帳のようなものを作り、管理を徹底するようにしてください。なお都心部の学校では周辺に自生地がない場合が多いと思います。この場合は植生の導入に関して専門家に相談する必要があるでしょう。

 人為的な拡散を防ぐために、他校への移植などは安易に行わないことが肝要です。もし他校や既施設から譲り受けたものが現在ある場合は、来歴(採集池や移動経路、時期など)を可能な限り調査し、上記と同様に産地を台帳などに記録しておくようにしてください。

 導入する種の中で特に注意を要するのは、帰化種、外来の栽培・園芸種などです。これらは学校外の逸出による周辺生態系に及ぼす影響が大きく、「学校ビオトープ」には導入するべきではないでしょう。すでに生えている場合は除去するくらいの措置を考えてください。これらを教育目的で子どもたちに見せたい場合は、帰化種は理科室内の水槽で育てるとか、栽培種は管理の行き届いたコンクリート製の庭池に鉢植えしたり、またプランターなどに植える、といった方法が考えられます。これら要注意種については具体的な種名を以下に掲げました。

 業者、園芸店からの出所のはっきりしない植物の購入は、地域の自然の復元や地域の植物を見せるといった「学校ビオトープ」の目的からみて不適切でしょう。また人為的拡散による遺伝子汚染が生じる可能性があります。仮に地元からの収集であっても、注文が増大すれば乱獲が懸念されます。自分たちで責任を持って収集し、管理し、学習教材として使っていきましょう。

身近に見られる帰化種、外来の栽培・園芸種
沈水植物  オオカナダモ
 コカナダモ
 フサジュンサイ (カボンバ)
抽水植物  キショウブ
 キシュウスズメノヒエ
 チクゴスズメノヒエ
 オランダガラシ (クレソン)
 オオフサモ
 ハナショウブ
浮葉植物  スイレン
 ハナガガブタ
 ホテイアオイ
 ボタンウキクサ
 その他アクアリウム用輸入植物
*は室内の水槽で実験・観賞用または魚の飼育用として利用することが多いものです。野外に定着していても、帰化種やアクアリウム用植物が逸出したもである場合が多いので充分注意してください。


 以上、かなり細かいことも述べましたが、これらは「野生生物を活用するときの最低限度のルール」をまもっていく上でのキーになる部分ですし、「学校ビオトープ」という教育的な目的のある「ビオトープ」ゆえに、子どもたちと一緒になってこれらを考え、理解し、ビオトープづくりを進めていくことが大切ではないでしょうか。そしてこの実践は、生きた環境学習そのものといえるでしょう。


■植栽の実際例

 では最後に、具体的な植栽例について述べておきましょう。

 繰り返しになりますが、植栽種の選定基準は、......
  1. 従来からその地域に自生している在来種であること。
  2. 帰化種や栽培種は避けること。
  3. 絶滅危惧種、各地域レッドデータブック掲載種などの貴重種は避け、いわゆる普通種を中心とすること。
  4. 普通種でも生育条件を整えることが困難な種は避けること。

ということになります。下の図が、それらを考慮に入れたイメージ図となります。

「学校ビオトープ」植栽例
兵庫県南部地域を基準とした、「学校ビオトープ」の植栽イメージ図。

学校ビオトープの植栽種の例示 (兵庫県南部地域、2002年3月現在)
沈水植物  エビモ
 マツモ
 ホッスモ
 セキショウモ
抽水植物  アシカキ
 カンガレイ
 クログワイ
 ヒメホタルイ
 オモダカ
 ショウブ
 ヨシ ※1
 マコモ
 ガマ
 ヒメガマ
浮葉植物  ヒシ (オニビシ)
 ホソバミズヒキモ
 ヒルムシロ
浮遊植物  ウキクサ ※2
 アオウキクサ
※1.大型種で1.5m以上にも成長します。
※2.積極的に導入すべきではなく混入することが多い。水面に繁茂すれば沈水植物などの生育が不良となります。

<注意>これらは2002年3月現在の兵庫県南部地方を中心に考えたものです。地域によっては上記の中にも、その地域の貴重な種が含まれる場合がありますから注意してください。また兵庫県南部地方においても、今後これらの中から絶滅の危機に瀕する植物が出る可能性があり、導入前には最新情報を収集し、かつ専門家に相談するようにしましょう。